2002年7月号 P47
オートキャンパー誌記事
ヒュンダイ SRXトラック研究 no.1

no.1  no.2  no.3  no.4  韓国カタログ写真より
オートキャンパー誌


写真はオートキャンパー誌紙面コピーをスキャンのため画質が悪いです。すみません

国産キャブコン市場に新風を吹き込む韓国製新型ベース車

ヒュンダイSRXトラック研究

今でこそ様々なベ一ス車が存在するキャブコンだが、以前はカムロードが圧倒的な支持を得ていた。しかし,足回りの許容量や乗り心地、パワー不足といった不満も多かった。といって2トン車をベ一スにするとパワフルにはなるのだが,硬い乗り心地や騒音が問題となる。そんな状況で登場し,今最注目されているの韓国ヒュンダイ社製のSRX トラック。キャブコンのべ一スに求められる積載能力、乗り心地、パワーを持ったこのトラックを徹底的にチェックしてみた。

「現代(ヒュンダイ)」という会社を知っているだろうか。韓国の大企業の1つで、鉄鋼、金融、建設、造船といった重工業各社を傘下においている。

そのグループの1つが「ヒュンダイモーター」。数年前に日本にも進出してきた自動車メーカーで、日本ではヒュンダイジャパンとして法人登録されている。サッカーW杯のオフィシャルスポンサーでもあり、最近は日本でもテレビCMを放映しているのでご存知の方もいると思う。

そのヒュンダイモーターが日本のキャンピングカー業界にも進出してきたことは、あまり知られていないだろう。

日本に入ってくるきっかけとなったのは、キャンピングカーの大手ビルダーであるバンテツクが、韓岡自動車業界を通じて、輪入をしてみないかと問われたところから始まった。その候補となったクルマのー台がSRXトラックであった。正式名はヒュンダイリベロSRX。日本名は登録の閑係もあって、とりあえずSRXトラックとしている。リベロSRXは韓国で生産され、韓国内のみのシェアを持つ車両。同様のシャシーでH1トラックというのも存在するが、こちらはヨーロッパ輸出モデル。日本に入荷しているのはとりあえず1グレードで韓国仕様そのままのモデルだ。

どうしてSRXトラックだったのか

日本のキヤンピンクカー市場を見てみると、バンコンの次に生産台数が多いのがキャブコンとなっている。バンコンは町工場程度の規模でも作られており、木来のキャンピングカー登録とかけ離れた、装備だけキャンピング仕様のバニング車も含めた台数。一般的であるバンやワゴン車を使って架装しており、ベース車そのものに需要があり、パワーや乗り心地は年々進化している。

ところがキャブコンは、今でこそグランドハイエースを仕立てたキャンピングカーが存在するが、やはりベース車の中心はラライトトラック。その中も2トン車ともなれば宅配業を中心にある程度の需要があるものの、カムロードクラスの1.5トン車の需要は少ない。開発過程においても進化が乏しく、マイナーやフルモデルチェンジのペースはかなり遅い。世間がハイパワー化を求めているにも関わらず、1世前のエンジンを搭載して新型車と言っている状況だ。キャンピングカーの歴史、キャブコンの歴史がわずかだから、仕方がないのかもしれないが‥‥。

排気ガス規制の影響もあってか、1トン積みクラスのライトトラックを中心にガソリンエンジンを搭載した車両が増え、実質的的なパワーは向上した。だがディーゼルエンジンと比べるとトルク感は失われ、車重のあるキャンピングカーは、発進時には高回転に頼るしかない。ハッキリ言ってしまうと、国産ライトラックには魅力あるベース車がないのが現状なのだ。そんな背景からSRXトラックが注目される存在となったのだ。

最も重要視されるパワーだが、SRXトラックのパワーユニットは2500tのディーゼルエンジン。排気量だけを見るとカムロードよりは劣るが、こちらはインタークーラーターボ付き。2トン以下のライトトラックではその存在が消えてしまったターボ化がされているのだ。通常ターボを装着するとNAエンジンの約1.4倍のパワーを出すと言われる。

SRXトラックは最高出力103馬力。3000cc、91馬力のカムロードよりもパワフルだ。3トン近いボディで10馬力程度のアップではスポイルされる部分も多い

が、ターボの効果は大きい。アクセルレスポンスが良く、低速域から反応する。トルクもカムロードよりもあり、どちらかと言うとパワーで車体を押し出す印象でガソリンエンジンを思わせる反応を示す。高速域でも伸びがあり、100q/hがやっとということはなく、そこから+20km/hの速度まで無理なく加速する。追い越しでも登坂路でも問題ないのだ。

今回、架装前の荷台付きシャシーの状態で試乗したが、その走りはかなり俊敏で1KZエンジンのハイエース並に良く走る。これだけパワフルであれば当然架装後も十分カムロードのストリツプシャシー下でも実現できないような速度域で巡航できる。

足回りはフロントダブルウイッシュボーンでリヤリーフスプリング。これは日本のライトトラックと同じ作リ。リヤは小径ダブルタイヤだ。セッティングが絶妙なのか、足回りの許容荷重が高いのか、とにかく乗り心地がよく、安定感が高い。コーナリング姿勢も大きな横揺れが起こるようなことがない。キャブオーバースタイルでないので、フロントシートでもその良さが実感できる。

シャシー自体の積載重量は1トン。カムロードよりは少ないので架装重量、ボディサイズは限定されるが、既存のキャンピングカーでも1トン積みのライトトラックをベースにしたモデルが多く存在することを考えると、べース車として十分使える。

ワゴンナイズされたフォルムと室内装飾

前面衝突基準が問題視される今、1トン積みトラックはとりあえずフロントボンネットを持ったような形になったが、それ以上のモデルに関してはいまだに鼻がない。基準はクリアしているものの、不安に思うユーザーは多くいる。SXRトラックのスタイルはワゴンからの派生モデルであるために、初めからボンネットを持った仕様。この差は大きい。メリツトはスタイリングの良さ。それにシェルを合わせることでより個性的なキャンピングカーに出来る。フロントグリルは日本車にはないかなりゴツイ印象だ。デメリットは車両サイズが大きいこと。後部シャシーをカツトすれば5m以内に収まるが、そのまま使うと超えてしまう。駐車場枠、フェリー料金の関係から何かと5m以内が求められる国産キャンピングカー市場において、この大きさが不利になることは多々ある。グランドハイエースでもこの数字を上回るので良しとしたい部分でもあるが。

内装も今どきのクルマとして十分な仕上げがされている。丸みを生かしたダッシュパネル、操作のしやすさと見た目の良さを持ったスイッチ類、さらに各部が木目調の仕上げとなっている。外観はもちろん、内装も10年前から大して進歩していない国産ライトトラックとは大違いだ。借しまれるのはシフトがフロア形式であること。ATではあるのだが、コラム形式ではない。せっかくサイドスルーができるほどのシートなのに、シフトがジャマになって動きがさまたげられてしまう。

今後の輸入形態とメンテナンス体勢は

現在SRXトラックはヒュンダイジャパンでは扱っておらず、バンテックが並行輪入している。当然、全国展開のディーラー網で面倒を見てくれるようなことができないのが現状だ。これは現在入ってきている輸入車でも同じことで、キチンと面倒が見られるのはベンツぐらい。ただしSRXトラックの場合は、すべてが見られないわけではない。

SRXトラツクに使われている大元となったエンジンは実はミツビシ製。ミッションはアイシンだ。一世を風靡した2世代前のパジェロのエンジンそのまま。生産こそ韓国となっているが、エンジン形式までも同じ4D56となっている。エアクリーナー類やオイルフィルターといった主要メンテナンスパーツは、パジェロ用の物が何の加工もすることなく使えてしまう。もちろん元がミツビシ製で信頼度は高い。動力関係の作りも単純で、ボンネツト内部はかなりスカスカ。もし何らかのトラブルがあっても、町の修理工場で十分対応できるレベルの作リなのだ。

ヒュンダイリベロSRXとして韓国で販売されているのはショートホイールベース、同じくキングキャブ、日本に入ってきているロングホイールベースのショートキャブ、同じくキングキャブの4グレード3カラー。さすがにストリップシャシーでは入っておらず、荷台付き。輪入される時点で装着できるオプションはすべて付けている。その内容はリヤLSDやフロントメツキグリルなど。スタイリングと走行性能で重要視される装備を主に装着している。

問題視されるとすれば左ハンドルのみの設定しかないこと。韓国は右側通行行であり、国内仕様を入れる以上は仕方がないことだ。ディーゼルエンジンに閑する排気ガス規制の対象も考えられるが、H1トラックとして欧州に輸出しているモデルは、日本の短期規制値

を余裕でクリアしている。さらに輪入車として型式認定を取っていないので、初めから規制対象外となっている。輸入台数が多くなれば、ディラー形態の拡大や右ハンドル車の設定もあり得るので、その辺りも期待したいところだ。

ダブルタイヤの影響は大きく、実に安定した走行性能を実現。カムロードよりも良いだろう。リアLSDもよく効き、国産4WDモデルを凌駕する走りを実現
2500ccインタークーラー付きディーゼルターボエンジンは2世代前のパジェロと同じ。それだけに信頼性が高い。